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売掛債権を活用したファクタリングでは、3社間ファクタリングでは売掛先へ売掛債権の譲渡を伝える必要があります。2社間ファクタリングでも、法務局へ譲渡登記をする必要が出てきます。これはどちらも第三者対抗要件を備えるためなのですが、ファクタリングの売掛先への通知方法について解説します。
第三者対抗要件とは?
ファクタリング会社がファクタリング(売掛債権の譲渡)を行う時に必ず行う必要があるのが
第三者対抗要件を備える
ということです。
第三者対抗要件というのは
例を挙げて説明すると
A社がファクタリング会社B社に1000万円の売掛債権Dを900万円で譲渡するケースで考えてみます。
「売掛先への通知」をしない場合
A社の経営者が悪い人で
- ファクタリング会社B社にも、1000万円の売掛債権Dを900万円で譲渡
- ファクタリング会社C社にも、1000万円の売掛債権Dを900万円で譲渡
していた場合
A社は1000万円の売掛債権Dを1800万円として資金化することできてしまうのです。
当然、売掛先(クライアント)は買掛金の1000万円しか支払いませんから、支払日には、ファクタリング会社B社 or ファクタリング会社C社のどちらかは必ずお金が入金されないことになります。
これが成立してしまったら、どちらかのファクタリング会社は大損するのです。ファクタリング会社は怖くてファクタリングというサービス自体を提供することができないのです。
そこで重要になるのは「第三者対抗要件」です。
第三者対抗要件とは
すでに当事者間で成立した権利関係を第三者に対して対抗(主張)するための法律要件のこと
を言います。
前述した例で言えば
A社とファクタリング会社B社が契約している状態で、ファクタリング会社C者が「その売掛債権の譲渡はうちが先に契約していたものなのでうちに権利があります。」と主張してきたとしても、
ファクタリング会社B社は
- こっちは売掛先から承諾書をもらっています。だから、うちの会社が法律的にその債権の売掛先からの支払いを受け取る権利があります。
- こっちは売掛先へ内容証明を送っています。だから、うちの会社が法律的にその債権の売掛先からの支払いを受け取る権利があります。
- 売掛債権の譲渡を法務局に登記しています。だから、うちの会社が法律的にその債権の売掛先からの支払いを受け取る権利があります。
と言えれば、自社の権利であることが法律的に証明されることになります。裁判で争っても、勝てるのです。
これがファクタリングにおける「第三者対抗要件」です。
ファクタリング会社は必ず「第三者対抗要件」を備えないとファクタリング(売掛債権の買取)ができないのです。
第三者対抗要件の種類
対抗要件 | 方法 | 手続き | 法人 | 個人事業主 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
---|---|---|---|---|---|---|
承諾 | 売掛先の承諾 | 売掛先から「承諾書」をもらい、公証人役場で確定日付をもらう。 | ○ | ○ | – | ○ |
通知 | 売掛先へ通知 | 売掛先に「通知書」を内容証明郵便で送付する。 | ○ | ○ | – | ○ |
登記 | 法務局へ登記 | 法務局で債権譲渡登記の手続きをする。 | ○ | × | ○ | – |
となります。
個人事業主は法務局へ登記できない
法務局で債権譲渡登記の手続きができるのは法人のみです。個人事業主は法務局への登記ができないため、個人事業主がファクタリングサービスを利用する場合には「売掛先の承諾」「売掛先へ通知」のどちらかが必要になり、3社間ファクタリングになるのです。
2社間ファクタリングでも譲渡登記は必要
前述した通りでファクタリング会社は必ず上記のいずれかの第三者対抗要件の具備を行います。売掛先へ知られないで済む2社間ファクタリングは必然的に法務局での債権譲渡登記ということになります。
まとめ
ファクタリングサービスでは「第三者対抗要件」というのは必須のものなのです。2社間ファクタリングにしろ、3社間ファクタリングにしろ、いずれかの方法で「第三者対抗要件」を備えれなければファクタリングサービスは利用できないのです。