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でんさい(電子記録債権)を活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか?今回は「でんさいのデメリット 」について解説します。
支払企業のでんさい活用のデメリット
1.「でんさい」と「手形」の併用がより手間になる
取引先への手形の発行数が多ければ多いほど、すべての取引先に「でんさい」への切り替えの同意や手続きをしなければならないことが大きなデメリットです。
「でんさい」に移行した取引先と「手形」のままの取引先が並行でいる状態は、より管理コストがあがってしまう結果になってしまう。
2.取引先が「でんさい」対応していない
取引先が「でんさい」に対応していなければ、支払い手段がなくなってしまいます。「手形」から「でんさい」移行したくとも、切り替えられないのです。
3.システムの問題
業務フローはもちろんのこと、社内で利用している決済システムなどが「手形」前提のものだと、システム自体の改修が必要になり、「でんさい」導入自体にも、コストがHッ制することになります。
4.「手形」と比較して「売掛債権」の移行にはメリットがない
「手形」 → 「でんさい」の場合
- 手形の発行コスト、管理コストなどが不要になる
- 印紙税が不要になる
- 手形の保管コストが不要になる
- 部分的に譲渡や割引が可能
- 手続きが簡素化される
という多くのメリットがあり、実際に手形の「でんさい」移行は進んでいます。
しかし、
「売掛債権」 → 「でんさい」の場合
これと言ったメリットがないのです。
- 債権発生の証拠がデータとして残る
というメリットはありますが、それだけのために「売掛債権」 → 「でんさい」への移行が進むとは思えません。
- 「でんさい」は簡易に譲渡や割引が可能
とされていますが、ファクタリングを利用すれば「売掛債権」も簡単に譲渡できます。
- 「でんさい」は売掛債権の回収率が上がる
とされていますが、支払わない企業、倒産する企業から回収してくれるものではありませんので、回収率が上がるわけでもありません。
「売掛債権」 → 「でんさい」を切り替えるメリットが不足していること自体が「でんさい」のデメリットと言えます。
全銀電子債権ネットワークは
「売掛債権」 → 「でんさい」切り替え時に支払いサイトを1ヶ月延ばすことで
- 支払企業 → 支払いまでの期間を延ばせる
- 納入企業 → 「でんさい」で譲渡すれば早期の資金化が可能
と双方にメリットがあると提案していますが、資金繰りに苦慮していない納入企業にとっては、まったくメリットになっていません。これでは普及は難しいと言えるでしょう。
まとめ
でんさいには
- 足並みをそろえた「手形」から「でんさい」への切り替えが難しい
- 「手形」から「でんさい」へ切り替える際にフローやシステムを見直すコストが発生する
- 「売掛債権」から「でんさい」への切り替えにはメリットがない
というデメリットがあります。
現実的にはこれらのデメリットが要因で「でんさい」の普及というのは進んでいないのです。